
「京都 清宗根付館」は、現代根付を中心に根付を専門に紹介する美術館として、月替わりで企画展を開催している。
4月から6月にかけては、企画展「根付百科事典」展を実施しており、6月の企画展は「科学:進化と英知の物語」展。人類の偉業や進歩をテーマにした根付を紹介している。
「京都 清宗根付館」について

「京都 清宗根付館」は、佐川印刷取締役名誉会長の木下宗昭氏による「日本のよき伝統を、日本人の手によって、日本に保管したい」という発意によって、文化首都・京都に設立された日本で唯一の根付を専門とする美術館。同館では「新たな挑戦」と「絆」をむね(宗)とし、根付と根付をめぐる文化の継承・創造・発展を目指し、「魅せる」「育む」「繋がる」を使命に、地域と人々に開かれた美術館として活動している。
佐川印刷のメセナ事業の一環として運営されており、2007年9月に開館。京都市の有形指定文化財で、京都市内に現存する数少ない武家屋敷と京町屋の特性を併せ持つ郷士(上層農民)の邸宅「旧神先家住宅」に、現代根付約400点が展示されている。
4月~6月にかけて「根付百科事典」展を開催
根付はおよそ人が考えられる発想を活かして多種多様な題材を作品にすることから、掌(たなごころ)の森羅万象とたとえられる。そこには人類の知識が集約されたあらゆる分野を横断し、人類が考え得るすべての事物が網羅されている。それはさながら根付による百科事典といっても過言ではないという。
そこで今年4月~6月にかけては、企画展「根付百科事典」展を開催。根付の多彩さを体系的にまとめ、百科事典のように知的好奇心をくすぐる現代根付を紹介している。
時代を超えた人類の進歩を根付でたどる企画展
6月は「科学:進化と英知の物語」展と題し、日進月歩の進化を遂げてきた人類の偉業や文化の発展など時代を超えた人類の進歩を根付でたどる。
自然界の不可思議な事象に対し観察や実験、検証をすることで世界の仕組みを解明しようとする知的な営みが科学とされる。それは人類が誕生してから常に進化し続ける知識の体系でもある。人類の英知は科学によって獲得され、近年ではAI による発展も注目されている。
根付では科学で実証された明快な世界と、そこから少し外れた未知や未見の「なにか」とのズレに焦点を当てて、その差異から生まれる違和感を作品にすることがある。ただ科学を信奉するだけでなく、解明できない謎や社会の矛盾などをあぶり出すことで新しい視点に気づかせてくれるのが根付の魅力でもある。
展示中の根付の一部を紹介
「科学:進化と英知の物語」展にて展示されている根付の一部を紹介しよう。

まずは、「かぐや」。平安時代に成立した日本最古の物語『竹取物語』。月探査衛星「かぐや」から撮った地球とかぐや姫。最先端の技術と昔話をひとつの根付にしている。
作者は宍戸濤雲(1960~)氏。高2.0cmで、素材は象牙・鹿角。

続いて、「望郷」。織田信長は当時の最先端技術や科学的合理性を積極的に導入した武将。海外の文化や技術に興味を持ち、広い世界に目を向けていたとされているという。
作者は喜山利歩(1972~)氏。高2.8cmで素材は黄楊・鹿角・水牛。

「ファーブルと夏休み」も登場。『昆虫記』で知られるフランスの博物学者ファーブルは幼少期に祖父母に預けられ、自然豊かな環境で育ったことが、後の研究に影響を与えたといわれている。
作者は北澤泉水(1968~)氏。高2.5cmで素材は陶。

続いて、「グーテンベルグの印刷機」。ドイツの金細工師グーテンベルグは1445年頃鉛合金を用いた活版印刷により印刷革命をもたらした。活版「聖書」がベストセラーに。
作者は伊藤滋女(1963~)氏。高2.8cmで、素材は黄楊・漆。

「神奈川沖浪裏」もお見逃しなく。北斎の透徹した観察眼から生まれた傑作。大波が砕け散る直前、波頭が渦巻く形状は現代科学で流体力学に適っていると証明された「迫真の大波」だ。
作者は小野里三昧(1967~)氏。高4.3cmで、素材は黄楊・漆。
この機会に、企画展「科学:進化と英知の物語」展に足を運んでみては。
■「科学:進化と英知の物語」展
期間:6月2日(火)~30日(火)
場所:京都 清宗根付館
住所:京都府京都市中京区壬生賀陽御所町46番地1
公式HP:https://www.netsukekan.jp
(ソルトピーチ)